イタリアの健康事情

健康には、いや「健康によさそうなものには」目がないのがうちの母…オカンである。
健康にいいと聞いたものはとにかく手を出す。かつてはケフィアことカスピ海ヨーグルトから始まり、酢漬けのタマネギ、酢大豆、納豆、トマト寒天、雑穀ごはんと来て、今はもち麦を食している。材料が手に入らなかったり作るのが面倒くさくなって食材自体は数か月スパンで変わるのだが、それでも食卓に「健康食材」が途切れたことはない。その健康へのパッションには感嘆を禁じ得ない。ケフィア以前は物心つく前で記憶がないが、おそらく紅茶キノコなどにも手を出していると私はにらんでいる。
体を錆びさせるという事で、もうここ数年夕飯にはオカンの食膳に穀物こと炭水化物がよそわれたことがない。おかずだけを口にするオカンの隣でモソモソと飯を口にする父と私の気持ちはなかなか得も言われぬものがある。
食事だけではない。ほぼ毎日(これは父と共に)約2時間のウォーキングに出かけ、茶の間でくつろいでいても思い出したようにストレッチや呼吸法を始める。そのストイックなさまは健康のためのアスリート、いやもはや求道者である。
子の私としては時々ついていけないと思う時があるが、そんなオカンは輝いている。是非とも夫婦そろって100歳を超えて長生きしてほしいものである。
そして、最近、衝撃的なことに、ウォーキングでもオカンについていけない事が判明してしまった。
オカンを見習い、私も健康の求道者となるべく意識改革が必要…なのかもしれない。取りあえず、明日は外を散歩でもしようかと思う。イタリアの健康事情いりょうについて に移住して15年経ちました。
ここに住んでいて、健康管理のことでイタリア人はわたしたち日本人とはずいぶん意識や習慣の違いがあって面白いなあと感じることがいくつかあります。
イタリア人は髪の毛を洗ってすぐに乾かそうとし、自然乾燥を嫌がります。シャワーを浴びた後、私などはビールなどを飲みながら自然に髪が渇くのを待つのが常ですが、大半のイタリア人はすぐにドライヤーをかけます。私は朝シャンをして半渇きのままで出掛けることなどしょっちゅうなのですが、イタリアでは町を歩いていて髪がちょっとでも濡れている人を一度も見たことがありません。イタリアでは髪をすぐに乾かさないと冷えて頭痛になると言われているのです。
イタリア人は日本人と正反対で熱いもの、冷たいものは口に入れたがりません。日本人だとお茶、ラーメン、そばなどはふうふうしながら熱いうちに頂くのが美味しいとされていますが、イタリア人はパスタでもオーブン料理でも、出来立てはすぐに食べず、ゆっくり盛り付けをしながらふうふうしなくていいくらいさめるのを待って食べ始めます。逆に冷たいもの、例えば日本人はビールはグラスもいっしょにキンキンに冷やして頂くのが最高に美味しいとされますが、イタリア人は冷えすぎた飲み物を目にすると顔をしかめて、「お腹を冷やしてしまう」といい、これもまたせっかくのキンキンが収まるのを待つのです。体調が悪いと食欲が落ちるので、私たち日本人はお粥を食べたくなりますよね。海外で暮らしていても同じこと、私はイタリアに住んでいますが、具合が悪い日はお粥を食べます。使うお米はイタリア米でも、お粥のレシピに忠実に作れば同じように美味しくなります。お粥には塩と時々卵を入れるだけ。あっさりしすぎていますが次の日は生き返ったように元気になります。
このお粥の話をするとイタリア人は気持ち悪そうにします。スープも取らずに米を歯ごたえを残さずぐちゃぐちゃに煮込む料理はイタリア料理の文化ではあり得ないことなのです。お米を炊くときに出る臭いが嫌いな人もいます。体調が悪いとあっさりしたものが食べたくなるのはイタリア人も同じですが、お粥は絶対に食べることはありません。
それなら、イタリア人は具合が悪いとき何を食べているのでしょう。
彼らはたっぷりの肉と野菜でダシを取ったスープにたっぷりのパルミジャーノチーズをかけたり、いつもの歯ごたえそのままのリゾットを作って、そこにまたたっぷりチーズを振っていただくのです。私たちにはとても食べられるものではありませんが、彼らにとってはこれらが私たちにとっての「お粥」にあたる、あっさりのありがたい料理なのです。
そして次の日けろっと元気になるのです。
この違いは太古の昔日本人が農耕民族、イタリア人が狩猟民族だったことから来ているそうです。遺伝子の違いで体が欲する食べ物にも違いが出るということですね。
こういう歴史や遺伝的なことまで理解し合えれば、私たちがお互いの食生活が疑問にならず、よりいい関係でいられるのでしょう。イタリア人は面白い国民だなと思うことが日常多々ありますが、風邪にしてもそうです。
一般に、風邪とインフルエンザには違いがあって、風邪は主に喉の痛み、鼻水、せき、痰などの症状が徐々に進行するもの、インフルエンザはまずは急に高熱が出たり、体がだるくなったり、関節が痛くなり、そのあと風邪と同じ症状に移ると言われていますが、イタリア人にとっては風邪もインフルエンザも全部一緒でなんでもかんでも、軽くても重くてもすべてインフルエンザと言います。厳密にいうと風邪の存在も知らないわけではないのですが、要は病気の扱いが大げさなのです。
イタリア人は風邪をひくとだいたいいつも「インフルエンザです」といって一週間は学校や仕事を休みます。日本だと考えられない甘さです。
彼らの中では、風邪のまま仕事に行くと同僚に感染してしまう、同僚が嫌な思いをするから完全に治るまで会社に出てはいけないという考えで、これが本人にも周囲にも共通の理解なため、一週間休んで文句を言う人はいません(自分の番になったらしっかり休ませてもらいたいから?)。だから本人も安心して休養することが出来ます。
それで仕事がまわるなら、むしろいいことだと思います。日本人は体調が悪くても無理して働いている人がどんなに多いことでしょう。少しずつ日本も社会が変わっていくといいなと思います。